Issue #23 ボディワークにおけるクライエントの役割

誘(いざな)うという挑戦

image Issue 23-1クライエントの誘導:何年にもわたり、スーパーヴィジョンとクラスで何度も訊かれた質問があります。「マッサージスクールでは、職業的な境界線を越えない限りはクライエントが望むものを与えるよう教わりました。私たちのクリニックは予約制ではなく、通りがかりで入ってくる男性客はむきむきに体を鍛えていて、リラックスするためにどんどん強押しするよう要求するのです。彼らは私よりもずっと大きくて、私はへとへとになってしまいます。1日の終わりには、私の身体は疲れて筋肉痛です。どうしたらいいのでしょうか。」多くのボディワーカーは、それが若く強い人であっても、自分の身体に症状を抱えるようになり、たった数年で燃え尽きてしまいます。機械的な強い圧を用いて身体の抵抗を圧倒する方法を教わった人々は、まだマッサージスクールに居ながらにして手根管症候群を呈します。私たちは、色々な圧を与える器具や「拳でグリグリ押す」ような機械を施術に取り入れ、私たちがあまり疲れずにクライエントの組織を柔らかくしてあげられるようにしています。あるいは、クライエントの過度な筋緊張を和らげるため、スチーム室やジャグジーに暫く入ってもらうこともあります。

クライエントのコントロール:私の経験上のひどいセッションは、トレガー® を学んでいた生徒であった時分の2回目のセッションでした。クライエントは、知り合いの女性で心理療法家でした。ボディワークの経験はある方でしたが、トレガーは受けたことがありませんでした。セッションの始めから、彼女は私に何をすべきか、どこを押せばいいのか、別の身体部位に移るタイミングなど、全てを言ってきました。それは25年以上前でしたが、今でも昨日のことのように覚えています。私が彼女の身体の色々な部位を動かし始めると、彼女は言いました。「動かすのを止めてください。刺激的すぎます。」彼女の首を揺りかごのように手に乗せて伸image issue 23-2展させると、「私は、首にはとても神経質なんです。手を離して下さい。あなたに首を締められるような感じがします」。彼女の大腿四頭筋をハンドルとして手で持って上腿を回旋させ始めると、「そこは強い圧をかけてください」と、自分の長脛靱帯上部を指さします。これはまさに、地獄からやってきたクライエントでした。このセッションについて、私は彼女への感情抜きにここに書きましたが、私はすっかり打ち負かされた気分になりました。ただ幸運なことに、そんなクライエントの経験はその後二度とありませんでした… ご参考までに。

image Issue 23-3出会われる:その身体で生きている人が、私たちを方向付けようとしていることは覚えておきましょう。その人は自分の身体が好きではないのかもしれません。特定の身体部位に恥ずかしい思いをしていたり、症状に罪悪感を抱いていたりするかもしれません。自分が「主導権を握っている」ため、あるいは魅力的でいるために、日中はむきむきの身体でいるのが重要だと思っているかもしれません。シンデレラの物語の姉妹たちのように、12センチヒールのイタリア製の幅の狭い靴を履いて「王子様」を惹きつけようと必死なのかもしれません。そうした状況で私が役立つと分かったのは、クライエントが自分の身体に入って行けるよう導くということです。眠ったりぼうっとしたりして身体を離れる手助けをするかわりに、症状を感じているまさにその部位に入れるようにするのです。その人自身が自分の身体に何を感じているにしても、自分の身体に入って内側で感じられるよう手助けをするのは重要なことです。これは私が知る限りで、治療的かつリラックスできる効果をクライエントに生み出す、いちばん速くて最も効果的な方法です。ですから、「指示を与える」クライエントや過剰な圧を与えて欲しがるクライエントは、マインドにある物語や判断なしに直に自分の身体に到達するという挑戦を与えられることになります。むきむきの人であれば、私は次のように伝えるかもしれません。「私が今手を置いているところで感じることを言葉にしてみて下さい。」ここで大変興味深いことが起こります。組織が変化し始めて、私は修理工ではなく介添人になっていくのです。

image Issue 23-4整体の例:数年前のことです。私は横浜市で上半身のためのポジショナル リリースのクラスを教えていました。クラスには男性が二人いました。一人は二十代半ば、もう一人は三十代半ばでした。二人とも大変力があり、肉体的な状態としては、ピークにあると言えます。二人とも整体師で、深部筋まで強い圧をかけるような力を使うボディワークを、フルタイムで整体院にて行なっているということでした。その整体院は、仕切りのカーテンも特になく、6台から10台のマッサージテーブルがあり、どのクライエントも同時にほぼ同じような施術を受けるそうです。プラクティショナたちは、クリニックが設定した手順に沿って行います。一般的な指針は、身体部位の「抵抗のバリア」が感じられるところまで圧をかけていき、クライエントの呼気に合わせてさらに圧をかけていくというものです。彼らは二人ともに痛みを伴う症状を抱えていて、それで仕事を辞めたいとさえ思うようになっていると言いました。ポジショナル リリース技術は身体への負荷がずっと少ないものですが、この手技を整体院で用いたら、仕事を失ってしまうのではと二人とも心配しました。

そこで実験をしてみました。まずその二人に組んでもらい、交互に整体のデモンストレーションをしてもらいました。他のクラスの人たちは皆見守っていました。(普段二人がしているやり方ができるように)体重を使って圧をかけられるようテーブルの高さを低く設定しました。なぜ彼らがもう辞めたいのか、もう見ただけで理解できるほどでした。彼らは、上半身の体重で圧をかけるために、肩と腕と手を何度も何度も使わねばならないのです。デモンストレーションの後で、私はある提案をしました。「すぐに圧をかける代わりに、位置を決めたら手を置いて、クライエントには置かれている手を感じるよう伝えてみて下さい。それから、手の下で生まれる柔らかさについて行ってみましょう。」私たちは皆びっくり仰天しました!クライエント役がプラクティショナ役の手を感じた途端、すぐさまリラックス効果が表れたのです。機械的な圧を用いる代わりに、クライエントの感覚とプラクティショナのほんの僅かな圧の間に生まれたやり取りは、うまく練習をこなしてきたダンスのようでした。彼らは、クライエントの参加を付け加えることにより、仕事も続け、新たな学びを保つこともできています。

image Issue 23-5言葉を用いる:セッションの間、言葉を用いるのを恐れるプラクティショナはたくさんいます。なぜでしょうか。私たちの「実践の範囲」を超えたことをしてしまうのではないか、そう恐れているからです。歴史的に、この状況はボディワークがケアを与える職業として定義された初期の段階から続いています。心理療法家、理学療法士、医療専門家から、ボディワーカーは言葉を用いる方法でクライエントとやり取りをするには充分なトレーニングを受けていないのだから言葉を用いないように、という強い警告を受けてきました。私たちはクライエントの感情的な過去の引き金を引いてしまうかもしれないし、医療的な処置が必要とされるところからクライエントを引き離すことになるかもしれない、というのです。そういうことなので、私たちはそれに従い、ボディワーカーになる準備やトレーニングではクライエントの身体的な経験を高めるための言葉の使用は少なくするか、あるいは全く用いないようにすることが教えられています。私と共にこの手法に取り組んだ生徒さんたちのように、インテイク(問診)以外でも静かにこの言葉を用いる方法を用いて、セッションが終わったところでまとめをメモしておくとよいでしょう。事実として、バーテンダーの方がボディワーカーよりも言葉を用いてカウンセリングすることにずっと許可が与えられているようなものなのですから! バーテンダーが客とカウンセリングしたことで訴えられたなどと聞いたことがあるでしょうか。

image Issue 23-6プレゼンスへと導く:これらのプレゼンシング イシューでは、私はクライエントとプラクティショナ両者が「身体中心の」セッションや治療においてより大きな役割を手にしているのではないかと示しています。また11月17日夕方の、禅僧であり心理療法家でもあるゲンジョウ マリネロのセミナー(注)についても別個のお知らせをお送りしていきますが、私が1993年に大学院でのインターンシップ中に彼と出逢い、それ以来スーパーヴィジョンのセッションをしてもらう中、共にガイドの役割について探求をしてきました。ゲンジョウは類稀な人です。なぜなら、彼は心理療法の限界を理解しており、また禅の弟子たちが自分自身のスピリチュアル(精神的)な発見へと向かう内なる取り組みに自ら入って行けるように導くことを分かっている人だからです。私は、クライエントが自分自身の内なるプレゼンシングに入る導きの手法を磨くため大学院に入りました。ボディワーカーという職業人として、私たちは大変深遠な未来に直面しているのです。プレゼンシングの様々な手法により、クライエントの取り組みがより深められ、私たちの一般的なセラピー・治療という概念を変化させると共に、新たな発見と境界のない適用法がもたらされることになるのです。

注:文章内のセミナーは、この記事が書かれて配信された時点での米国におけるものです。

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