Issue #24 ボディワークにおけるクライエントの役割 ケーススタディ:トシ

Presencing Issue 24.-1png日本でのセッションでしたが、トシに初めて会った時、彼は11歳でした。彼は喘息を持っていて、パニック障害と夜の睡眠障害に悩まされていると知らされていました。彼は有名付属中学・高校の受験を控えているとのことでした。日本では、この年齢での学校の選択が学歴と人生の選択を決定するものにもなりうるのです。彼は母親と一緒に来ました。眼鏡をかけ、紺色の半スボン、ブレザーを着て帽子を被り、リュックを背負っていました。彼の背は低く、かなり恥ずかしがり屋で私とはほとんど目を合わせませんでした。話すのも、母親と通訳を務めてくれているこいとを通してやっと話をしていました。彼の父親が鬱で仕事に行けないこともあり、様々な不安があると母親とこいとは事前に教えてくれていました。

トシは、死ぬことを心配していると言いました。彼は最近、自分の死の夢を見たのです。私はImage From Presencing Issue 24-2彼に夢の詳細を尋ねました。彼は、「自分が棺に横たわって、周りで悲しんでいる人がいるのを見ました。自分の顔も見えました。僕は年寄りでした。」私は言いました。「もしかすると、君は十分歳を取るまで生きることが分かったのだから、幸運なのかもしれないね。」そして、若い時分に私も似たような夢を見たことを彼に話しました。
それから母親が、トシが受験のことを心配していると言いました。彼は頷きます。彼の母親は、彼への心配だけではなく経済的な心配と安定への不安などの多くを彼にも与えてしまっているように見えました。話をしている時、彼女はかなり不安そうで緊張で震えているようでした。私は頭の中でこう考えたのを覚えています。「トシは母親を心配しているのだ」と。

トシと同じ年齢の頃、私も似たような状態にいました。父親はいなくなり、母は常にお金と安定について不安を抱えていたのです。私は、私が彼にボディワークをする前に、お母さんに一緒に施術をしようと提案しました。そうすれば、彼が彼女を落ち着かせることができるし、またこれから彼が母親にしてあげられることをいくつか手渡してあげられるだろうと思ったのです。

Image From Presencing Issue 24-3トシの母親にマッサージテーブルに横になってもらいました。私は15分ほどトレガー®をしました。私が彼女の頭、首、肩に働きかける間、トシには彼女の足に手を置いて欲しいと頼みました。(そうすることで)。彼がエネルギー的に彼女をグラウンディングさせられます。彼は大変注意深く彼女の足を持ってあげていました。それから私は、胴体と骨盤、下肢に働きかける間、彼には、手で彼女の首を揺りかごに乗せるようにしてあげて欲しいと伝えました。彼は彼女の身体の動きが伝わるのが感じられ、身体がリラックスするのも感じられたのです!それと、彼が一人でもできるシンプルな動きも見せて教えました。彼女は、彼の手がとても気持ちよく感じられるよ、と伝えてあげていました。

今度はトシがテーブルに乗る番です。彼の母親はかなりリラックスし、ゆったりと椅子に腰掛Image From Presencing Issue 24-4けてうとうとしていました。私は、母親にしてあげたようなトレガーの全身への動きから始めました。彼はこいとに、とても気持ちがいいと伝えました。「キモチイイ?」と私が言うと、彼は「はい」と答えました。暫くしてから、私はトシに目を瞑って身体を内側から感じるよう伝えました。彼はそうしました。とてもゆったりとして、より自由に呼吸ができるようになりました。私はその時、彼くらいの年齢だった頃に私を助けてくれた大人の男性たちに想いを馳せ、彼を手助けできる大人の男性として何かできることを示して欲しいと心の中で求めました。私は、彼には彼の恐れと肉体的な成長に役立つような、彼自身が使えるやり方が必要であることが認識できました。私は、レイキの臨床的なアプローチで、クライエントにも用いている「エネルギーツール」のいくつかを彼に教えようと決めました。

Image From Presencing Issue 24-5私は第二チャクラの見つけ方を見せてあげました。おへそから指2本分下がったところだよ、と。日本ではこのスポットは「丹田」と呼ばれ、武道家たちによく知られています。両手を丹田に乗せてもらい、私の手を彼の手の上に重ね、レイキをしました。置いている自分の手に向かって呼吸を吸ったり吐いたりするよう彼に告げました。彼はそれをやってみて、すぐさま手が熱くなるのを感じました。そして私は訊いてみました。「そこでは何を感じるかな?」トシは答えました。「いっぱいあったかくなって、身体に強い感じが入ってきます。」それから私たちは、第三チャクラ、太陽神経叢に移動しました。「じゃあここは、何を感じますか。」彼は暫く時間を取ってから言いました。「ほっとした感じと、静かな感じと、すごくあったかいです。」次は第五チャクラ、喉と胸の上部です。彼がいかにすぐに呼吸を入れられて、身体のエネルギーを感じることができたか、私は驚いてしまいました。彼はまた、彼が感じているようなエネルギーに対して大変繊細でした。「何かが開いて流れている感じです。風とか水みたいです。」私はこいとを見て、「スゴイ!」と言いました。

それから私は手を離し、三つの手のポジションを繰り返し、そこに呼吸を入れ、それぞれの感Image From Presencing Issue 24-6じたエネルギーを説明するのに使った言葉をそれぞれ繰り返すようにトシに頼みました:「強い、静か、開いている」。彼は自分一人でこれを続けました。そうしている間に、彼の手はとても赤くなってきたのです!彼の呼吸はどんどん深くなりました。それらのエネルギーセンターに呼吸をするのが好きかどうか、私はトシに訊いてみました。「はい」と彼は答えました。これで彼は自分の身体の内側でのエネルギーの感覚を得られたので、今度はエネルギーセンター同士のつながりを作り始めてみたらどうかと提案しました。片方の手をエネルギーセンターに、もう片方の手を他のエネルギーセンターに置くのです。「強さ」のセンターに呼吸を入れ、「静か」なセンターから呼吸を吐く、というように。彼は実際、エネルギーあるいは気を、身体を通して動かすのを学んでいたのです。この技術を日常的に実践したら、彼はもっと大きく強くなり、恐れがなくなるだろうと私は彼に言いました。彼は毎日やります、と言って、そして実践してくれました。

セッションを終えた時には、トシはきちんと私を見ながら話をしていました。心地よく呼吸をし、背が伸びたように真っ直ぐ立っていました。私も同じになっていました。彼はとても真摯で、私のアドヴァイスを遵守するに違いないと私は認識しました。母親と彼自身にできることを手渡したことにより、彼はもっと力づけられ、自信を持ちました。彼は自分のセッションに、全てに、自分から参加していました。私たちは、ソマティクス的な意識と内なる自信のためのツールをクライエント一人一人に与えることができる、そう信じています。もしも、私たちが身体意識とプレゼンスの理解をさらに広げ始めたなら、共にクライエントその人を探求し、発見していく感覚へと招くことができるでしょう。トシはその後、難なく試験に受かり、背が伸びてより自信をつけました。彼はこいとに、私の写真を送ってもらえないかを聞いてきました。
一年前に私が聞いたのは、彼は少林寺拳法のティームに入って練習に励んでいるとのことでした!

Issue #23 ボディワークにおけるクライエントの役割

誘(いざな)うという挑戦

image Issue 23-1クライエントの誘導:何年にもわたり、スーパーヴィジョンとクラスで何度も訊かれた質問があります。「マッサージスクールでは、職業的な境界線を越えない限りはクライエントが望むものを与えるよう教わりました。私たちのクリニックは予約制ではなく、通りがかりで入ってくる男性客はむきむきに体を鍛えていて、リラックスするためにどんどん強押しするよう要求するのです。彼らは私よりもずっと大きくて、私はへとへとになってしまいます。1日の終わりには、私の身体は疲れて筋肉痛です。どうしたらいいのでしょうか。」多くのボディワーカーは、それが若く強い人であっても、自分の身体に症状を抱えるようになり、たった数年で燃え尽きてしまいます。機械的な強い圧を用いて身体の抵抗を圧倒する方法を教わった人々は、まだマッサージスクールに居ながらにして手根管症候群を呈します。私たちは、色々な圧を与える器具や「拳でグリグリ押す」ような機械を施術に取り入れ、私たちがあまり疲れずにクライエントの組織を柔らかくしてあげられるようにしています。あるいは、クライエントの過度な筋緊張を和らげるため、スチーム室やジャグジーに暫く入ってもらうこともあります。

クライエントのコントロール:私の経験上のひどいセッションは、トレガー® を学んでいた生徒であった時分の2回目のセッションでした。クライエントは、知り合いの女性で心理療法家でした。ボディワークの経験はある方でしたが、トレガーは受けたことがありませんでした。セッションの始めから、彼女は私に何をすべきか、どこを押せばいいのか、別の身体部位に移るタイミングなど、全てを言ってきました。それは25年以上前でしたが、今でも昨日のことのように覚えています。私が彼女の身体の色々な部位を動かし始めると、彼女は言いました。「動かすのを止めてください。刺激的すぎます。」彼女の首を揺りかごのように手に乗せて伸image issue 23-2展させると、「私は、首にはとても神経質なんです。手を離して下さい。あなたに首を締められるような感じがします」。彼女の大腿四頭筋をハンドルとして手で持って上腿を回旋させ始めると、「そこは強い圧をかけてください」と、自分の長脛靱帯上部を指さします。これはまさに、地獄からやってきたクライエントでした。このセッションについて、私は彼女への感情抜きにここに書きましたが、私はすっかり打ち負かされた気分になりました。ただ幸運なことに、そんなクライエントの経験はその後二度とありませんでした… ご参考までに。

image Issue 23-3出会われる:その身体で生きている人が、私たちを方向付けようとしていることは覚えておきましょう。その人は自分の身体が好きではないのかもしれません。特定の身体部位に恥ずかしい思いをしていたり、症状に罪悪感を抱いていたりするかもしれません。自分が「主導権を握っている」ため、あるいは魅力的でいるために、日中はむきむきの身体でいるのが重要だと思っているかもしれません。シンデレラの物語の姉妹たちのように、12センチヒールのイタリア製の幅の狭い靴を履いて「王子様」を惹きつけようと必死なのかもしれません。そうした状況で私が役立つと分かったのは、クライエントが自分の身体に入って行けるよう導くということです。眠ったりぼうっとしたりして身体を離れる手助けをするかわりに、症状を感じているまさにその部位に入れるようにするのです。その人自身が自分の身体に何を感じているにしても、自分の身体に入って内側で感じられるよう手助けをするのは重要なことです。これは私が知る限りで、治療的かつリラックスできる効果をクライエントに生み出す、いちばん速くて最も効果的な方法です。ですから、「指示を与える」クライエントや過剰な圧を与えて欲しがるクライエントは、マインドにある物語や判断なしに直に自分の身体に到達するという挑戦を与えられることになります。むきむきの人であれば、私は次のように伝えるかもしれません。「私が今手を置いているところで感じることを言葉にしてみて下さい。」ここで大変興味深いことが起こります。組織が変化し始めて、私は修理工ではなく介添人になっていくのです。

image Issue 23-4整体の例:数年前のことです。私は横浜市で上半身のためのポジショナル リリースのクラスを教えていました。クラスには男性が二人いました。一人は二十代半ば、もう一人は三十代半ばでした。二人とも大変力があり、肉体的な状態としては、ピークにあると言えます。二人とも整体師で、深部筋まで強い圧をかけるような力を使うボディワークを、フルタイムで整体院にて行なっているということでした。その整体院は、仕切りのカーテンも特になく、6台から10台のマッサージテーブルがあり、どのクライエントも同時にほぼ同じような施術を受けるそうです。プラクティショナたちは、クリニックが設定した手順に沿って行います。一般的な指針は、身体部位の「抵抗のバリア」が感じられるところまで圧をかけていき、クライエントの呼気に合わせてさらに圧をかけていくというものです。彼らは二人ともに痛みを伴う症状を抱えていて、それで仕事を辞めたいとさえ思うようになっていると言いました。ポジショナル リリース技術は身体への負荷がずっと少ないものですが、この手技を整体院で用いたら、仕事を失ってしまうのではと二人とも心配しました。

そこで実験をしてみました。まずその二人に組んでもらい、交互に整体のデモンストレーションをしてもらいました。他のクラスの人たちは皆見守っていました。(普段二人がしているやり方ができるように)体重を使って圧をかけられるようテーブルの高さを低く設定しました。なぜ彼らがもう辞めたいのか、もう見ただけで理解できるほどでした。彼らは、上半身の体重で圧をかけるために、肩と腕と手を何度も何度も使わねばならないのです。デモンストレーションの後で、私はある提案をしました。「すぐに圧をかける代わりに、位置を決めたら手を置いて、クライエントには置かれている手を感じるよう伝えてみて下さい。それから、手の下で生まれる柔らかさについて行ってみましょう。」私たちは皆びっくり仰天しました!クライエント役がプラクティショナ役の手を感じた途端、すぐさまリラックス効果が表れたのです。機械的な圧を用いる代わりに、クライエントの感覚とプラクティショナのほんの僅かな圧の間に生まれたやり取りは、うまく練習をこなしてきたダンスのようでした。彼らは、クライエントの参加を付け加えることにより、仕事も続け、新たな学びを保つこともできています。

image Issue 23-5言葉を用いる:セッションの間、言葉を用いるのを恐れるプラクティショナはたくさんいます。なぜでしょうか。私たちの「実践の範囲」を超えたことをしてしまうのではないか、そう恐れているからです。歴史的に、この状況はボディワークがケアを与える職業として定義された初期の段階から続いています。心理療法家、理学療法士、医療専門家から、ボディワーカーは言葉を用いる方法でクライエントとやり取りをするには充分なトレーニングを受けていないのだから言葉を用いないように、という強い警告を受けてきました。私たちはクライエントの感情的な過去の引き金を引いてしまうかもしれないし、医療的な処置が必要とされるところからクライエントを引き離すことになるかもしれない、というのです。そういうことなので、私たちはそれに従い、ボディワーカーになる準備やトレーニングではクライエントの身体的な経験を高めるための言葉の使用は少なくするか、あるいは全く用いないようにすることが教えられています。私と共にこの手法に取り組んだ生徒さんたちのように、インテイク(問診)以外でも静かにこの言葉を用いる方法を用いて、セッションが終わったところでまとめをメモしておくとよいでしょう。事実として、バーテンダーの方がボディワーカーよりも言葉を用いてカウンセリングすることにずっと許可が与えられているようなものなのですから! バーテンダーが客とカウンセリングしたことで訴えられたなどと聞いたことがあるでしょうか。

image Issue 23-6プレゼンスへと導く:これらのプレゼンシング イシューでは、私はクライエントとプラクティショナ両者が「身体中心の」セッションや治療においてより大きな役割を手にしているのではないかと示しています。また11月17日夕方の、禅僧であり心理療法家でもあるゲンジョウ マリネロのセミナー(注)についても別個のお知らせをお送りしていきますが、私が1993年に大学院でのインターンシップ中に彼と出逢い、それ以来スーパーヴィジョンのセッションをしてもらう中、共にガイドの役割について探求をしてきました。ゲンジョウは類稀な人です。なぜなら、彼は心理療法の限界を理解しており、また禅の弟子たちが自分自身のスピリチュアル(精神的)な発見へと向かう内なる取り組みに自ら入って行けるように導くことを分かっている人だからです。私は、クライエントが自分自身の内なるプレゼンシングに入る導きの手法を磨くため大学院に入りました。ボディワーカーという職業人として、私たちは大変深遠な未来に直面しているのです。プレゼンシングの様々な手法により、クライエントの取り組みがより深められ、私たちの一般的なセラピー・治療という概念を変化させると共に、新たな発見と境界のない適用法がもたらされることになるのです。

注:文章内のセミナーは、この記事が書かれて配信された時点での米国におけるものです。